前に、腕ほどきで上げ手してしまう仲間のことを書きましたが、その腕ほどきに最近磨きがかかってしょうがありません。

本人は押える相手の手を上げることを、勿論、目指していますが、するすると押さえをほどいて自分の手が上がっていきます。こちら押える側からすれば、せめて指の第一関節くらいでひっかけられそうなものなのですが、どうしようもありません。ほどけてしまうので、こちらは別に崩されたり、浮かされたりということはまったくありません、幸か不幸か。自分の経験の範囲で不思議な思いをしたのはごく僅かしかありませんが、これこそ摩訶不思議と言ってよいです、もう笑ってしまうだけです。

上げ手にあと一歩だとか、何か足りないというより、上げ手の隣にある、上げ手を表とすれば裏、あるいは元々は逆だったのか。といった印象を受けます。上げ手は腕ほどきから生まれたという説もあります。

この不思議さ、文章にするのは難しいのですが、こちらの押えている手のなかを滑るように抜けていくのです。小手を素肌直に押えていても、胴着の上からでも関係ありません。滑る、現にその証拠に胴着の上から押えていると指のハラが摩擦でヒリヒリしてきます、翌日指紋が消えているくらいですから、スベスベになってしまう。

どんなに力で対抗しようと準備していても、動き出すとどういう訳だか力が入らないような不思議さです。

腕ほどきというとこれまで梃子を利用した方法とばかり思っていましたが、確かに梃子だと「ほどく」と言うより「外す」「切る」が当たってます、実はこのように滑るようにほどいてしまうのが本当で、高度な技術なのかな、と思います。

改めて、上げ手は腕ほどきから生まれたのか、と考えさせられます。

瓢漂会

そんなことが頭の片隅から離れずにいる数日後のあるとき、満タンのポットを手渡されました、そのとき胴体部分を両手ではさむように受けたのですが、アレ?これって似ていると思いました、そのポットの下に滑って落ちそうになる感覚が、それを必至に落とすまいとする自分の(無?)意識が…

意識の技術…

皮膚の表面が滑る、皮膚の下の筋肉の働き…

氷の上に立つと想像してみてください、踏ん張ろう(力を入れようにも)にも踏ん張れない(力が入らない)…

ちなみに、立位での両手上げ手ですが、これは座捕りに比べて格段と難しくなります、足が加わるし、中空で捕まれるし、自由度は増えるし、色々なのですが。この滑るテクニックを使うと!簡単に上げることができるのでした。

瓢漂会